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今週末はずっと寒くて雨ばっかりでしたが、いかがお過ごしだったでしょうか。
日付が変わるまでに更新できなくて残念ですが、やっと後編アップしました。
これで“Blue Lagoon Act 1. New Moon”が完結しましたが、この回からいきなりシャアの出番と台詞が増えたのはいいけど、激しいキャラ崩壊ぶりに、我ながら唖然とするやらなんとやら・・・(-_-;)
大好きなキャラなので、いつもそのキャラの元々の良さを損なわず、いかに作品に上手く適合させるかは、いつも頭の痛いところです。
あと、毎度毎度くどくて申し訳ありませんが、この物語はアホ管理人の独断と偏見に基づく勝手極まりないアホなパロディ二次創作です。
叱咤激励、愛の鞭は喜んで受けますが、誹謗中傷、苦情・クレームの類は一切受け付けませんので、あらかじめご了承下さい。
それに加え、今回はやたら長い上にあれこれやらかしちゃった感はありますが、
「それでもいいよ~!」な寛大なお方は、閲覧よろしくお願いします。
それでは、心の準備ができた皆様へ
「つづきはこちら」からお入りください。
Act.1 New Moon 3
車を停め、カバンをひったくるように抱えると、
エレベーターの到着が待ち遠しいと言わんばかりの勢いで階段を駆け登る。
会社から自宅までの帰り道、いつもより長く感じられたのは、
果たして帰宅ラッシュのせいか、それとも・・・。
自分の部屋に辿り着くと、勢い良く玄関のドアを開けるやいなや、家に駆け込む。
「例の彼」が眠っているであろう部屋の前まで足を運ぶと、深呼吸して呼吸を整え、
心の準備ができてから、ドアをノックする。
返事がなかったので、そっとドアを開けて、部屋の中の薄暗闇に向かって声をかける。
「ただいま。今、帰ったよ・・・。」
応えはなかった。
真っ暗な部屋の中、明かりを付けてみると、
目に入ってきたのは、からっぽのベッド。
・・・いったいどこへ行ったんだろう・・・?
朝日の中、今にも溶けそうな儚げな姿が脳裏にフラッシュバックする。
・・・まさか、彼は本当に幻だったんじゃ・・・・?
途端に狐につままれたような奇妙な気分になり、
辺りを見回すと、どこからともなく歌が聞こえてきた。
それはTVやラジオ、巷に溢れかえるありとあらゆる音声の中でも、
アムロが生まれてこの方、聞いたこともないほど透き通った美声だった。
天使の歌声、クリスタルヴォイス・・・様々なメディアで耳にする、
そんな表現が陳腐に思われるほどに、その声はどこまでも透明に澄み渡り、
透き通り、心に染み込んでくる・・・。
外国語にはあまり詳しくないアムロだったが、彼が記憶する限りでは、
世界中のどの言語ともつかない、聞いたことのない難解な言語で歌われており、
これまで聞いたことのあるどんな音楽にもない不思議な旋律を奏でていた。
それは耳にとても心地よく響き、聞く者の心を凪いだ海のように穏やかにする
不思議な魅力を持っていた。
まるで引き寄せられるように歌の聞こえてくる方向へ足を運ぶと、
辿り着いたのは、バスルームのドアの前。
日常の喧騒を忘れさせてくれる、その心癒す旋律にしばし耳を傾けていると、
おもむろに歌声が止んだ。
ドアが開き、中から出てきたのは、ガウンに身を包んだ金髪の青年。
風呂上がりのせいか、まだ完全に乾ききってないプラチナブロンドの髪は毛先がクルクルとカールし、透き通るように白かった頬には、ぼうっと上気したようにほのかな朱が差し、最初に出会った頃の氷の彫像を思わせる近寄りがたいクールな美貌から一転して、えも言われぬ妖艶さを醸し出していた。
その匂い立つような色香と、丈の短いガウンの裾からスラリとまっすぐ長く伸びる白い脚の艶かしさに、思わず目のやり場に困ってしまう。
「や・・・あ。風呂に入ってたんだね。着替えすぐに持ってくるから、待っててくれよ。」
言うなり、自分の部屋に駆け込む。
壁に取り付けた鏡に目をやると、真っ赤な顔をした自分が見つめ返してきた。
・・・落ち着け、俺!男相手に、何興奮してるんだ・・・しっかりしろ!
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、クローゼットから適当な服を見繕うと、
平常心を装って、彼が待つ場所へと戻った。
バスルームの鏡の前で、金の髪を梳る彼に着替えを手渡す。
「ほら、これに着替えな。じゃあ俺、外で待ってるから、着替え終わったら教えてくれ。」
高鳴る胸の鼓動を抑えながら、バスルームのドアを後ろ手で閉める。
彼と出会ってから、ずっとこの調子だ。カンベンしてくれ、思春期のガキじゃあるまいし!
得体の知れない相手に対する得体のしれない、この感情・・・。
それはこれまで、どんな女にさえも感じたことのない、強く不思議な情動だった。
心に湧いた正体不明のこの感情に、どうケリ付けてくれようかと頭を悩ませているうちに、
ふと、目の前のドアが開き、中からすっかり身支度を整えた彼が出てきた。
なんの変哲もない黒いセーターにブルージーンズという至って平凡でシンプルないでたちだが、かえって彼の非凡な美貌と抜群のプロポーションを際立たせていた。
そんな彼の姿に再び早鐘のように鳴る心臓を必死で抑えると、
務めて平常心を保ちつつ、話しかける。
「準備できたようだね。じゃあ、行こうか。」
車は住宅街を抜け、ようやく湾岸道路に乗り上げた。
窓の外では西の空に傾きかけた太陽が、黄昏時の街を茜色に染めていた。
ふと、隣の助手席の金髪の青年に視線を移すと、ぼんやり窓の外を見ている。
遠くを見つめるその瞳に映っているのは、果たして沈みゆく太陽か、
それとも黄昏色に染まる摩天楼か。
夕日に照らされたその彫刻のような高い鼻梁と繊細で端正な横顔が、
心無しか憂いの翳りを帯びているように感じられたのは、気のせいだろうか・・・・。
「そういえば、まだ名前、言ってなかったよな。俺はアムロ・レイだ。君は?」
哀愁漂うその横顔に一瞬見蕩れたのを隠すかのように、敢えて平静を装い話しかける。
「・・・・シャア。シャア・アズナブル。」
青年が口を開いた。彼が喋る声を聞くのは、これが初めてだ。
バスルームから聞こえてきたあの歌声と同じく、耳に心地よい美声だった。
「歌、聞かせてもらったよ。あれは君の国の言葉なのかい?」
彼がこの国の公用語を理解し、話せることがわかると、ひとまずほっとする。
世界中からやってきた多種多様な民族、言語、文化が混じり合い、ごった返す
ここ移民の街ロンデニオンでは、外国人など珍しくもない。
しかし、彼のあまりにも浮き世離れした風貌、そしてこの国、いや、
この世の者なのか疑わしいほど壮絶な美貌と色香、そして儚げな雰囲気に、
一瞬、果たして人間の言葉が通用するのかという愚かしい考えすら抱かせた。
それが全くの杞憂であったことに、心から安堵する。
自分の問いかけに青年が首を縦に振ったのを確認すると、さらに問いかける。
「出身はどこ?この国の人じゃなさそうだけど・・・。」
アムロの問いかけに、青年がうつむく。しばらく沈黙した後、口を開いた。
「ここからかなり遠い国だ・・・。それ以上は答えられない。」
そう答えると、再び窓の外に視線を移す。
遠くを見つめる彼の横顔に、さらに憂愁の色が深まっていく。
・・・しまった。気まずい質問をしてしまったか・・・。
車の中を流れる重苦しい空気を断ち切ろうと、頭を振り絞って
なんとか話題を変えようとする。
「そうだ、シャア。腹、減ってないか?
この近くに美味いシーフードレストランがあるんだ。
そこのロブスターは最高だぞ。」
途端に花が咲いたように青年の顔がぱあっと明るくなったのを見て、
内心ほっと胸を撫で下ろすと、ハンドルを切り、サザビー湾へと車を向けた。
車は湾岸道路を通り抜け、サザビー湾沿岸のシーフードレストランに到着した。
北米大陸西海岸にあるこの街、ロンデニオンは、太平洋から水揚げされる新鮮な海の幸、
肥沃な土壌から収穫される野菜や果物、そして広大な大地で放牧された牛肉や鶏卵など、
多種多様で豊かな食材に恵まれ、北米でも有数の「美食の都」としても知られている。
店に到着すると、二階の窓際の席に案内された。
大きな窓からは、サザビー湾の景観が一望できた。
窓の外では、どこまでも続く地平線の彼方へ今にも沈もうとしている太陽が、
海をオレンジ色に染め上げているところだった。
その自然の織り成す神秘的で幻想的なパノラマに一瞬、目を奪われたアムロだったが、
おもむろに目の前の金髪の青年―シャアに尋ねる。
「で、この街にはいつまでいるつもりだい?」
「次の満月の日まで・・・・ちょうど一ヶ月だ。」
「一ヶ月か。たったそれだけ?」
「それを逃すと、二度と帰れなくなってしまう・・・。」
「どうして?ビザの期限でも切れるのかい?」
アムロの問いかけに、再びシャアの表情が曇る。
・・・何か訳ありなようだな・・・。
沈痛な面持ちで、口を閉ざしてしまった青年。
流れる沈黙のあまりの居心地の悪さに、なんとか状況を打開しようとアムロが口を開きかけた、そのとき。
天の助けとばかりに、やってきたのは、皿からはみ出そうなくらい
大きくて真っ赤なロブスター。
途端に霧が晴れたかのように、シャアの表情に明るさが戻る。
「お待たせしました。出来立てで熱いので、お気を付けて。」
料理をテーブルに置き、一礼して去っていくウエイターに礼を言い、
目の前のロブスターの殻を切ろうとアムロがハサミを取り上げたそのとき、
いきなりシャアがロブスターの頭にかぶりついた。
カジュアルな服装をしていても、いかにも「良家の子息です」と言わんばかりの
洗練されたオーラと優雅な身のこなし、貴公子然としたノーブルで
端麗な容姿を持つ美青年にはあまりにもそぐわない行動に、
あっけにとられるアムロと周囲の客たち。
そのまま頭から殻ごとバリバリとロブスターに貪りつく金髪の美青年。
ぽかんと口を開けたまま固まってワイングラスを取り落とす御婦人、
あからさまに嫌悪感を剥き出しにして睨みつける身なりのいい年配の夫婦、
中には、彼を見てなにやらヒソヒソ囁き合う若い女性客達もいる。
あまりの居た堪れなさに一瞬、彼に何か一言、言ってやろうとしたアムロだったが、
有頭の大型海ザリガニに殻ごとむしゃぶりつき、幸せそのものと言わんばかりの
恍惚とした表情で、美味そうに内臓味噌を啜る青年を見ていると、
注意する気力も失せた。
周囲の視線など全くお構いなしと言わんばかりの金髪の美青年は、
ロブスターの肉と内臓味噌、殻はもちろんのこと、足やツメ、ヒゲ、目玉に至るまで
綺麗に平らげ尽くすと、その真っ赤な長い舌でぺろりと艷やかな唇を舐め、
腹が膨れて満足したのか、咲き誇る大輪の薔薇を思わせる、
この上なく綺麗な笑顔でにっこりと艶然に微笑んだ。